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マーケティングフレームワーク

マーケティングにおけるSTP分析の本質① セグメンテーション

2026年4月8日

医薬マーケティングLab編集部
2026年4月8日読了時間 3分

マーケティングにおけるSTP分析の本質① セグメンテーション

マーケティングにおいて、環境分析や市場分析で得られる情報は多岐にわたります。しかし、それらをどのように戦略として結びつけ、製品価値を最大化するかは、常にマーケターの課題であり続けています。

その中心に位置する考え方が STPSegmentationTargetingPositioning です。

STP分析は、以下の図のように、市場をいくつかのグループに分け(Segmentation)、その中から最も価値のある顧客群を選び(Targeting)、競合と差別化した立ち位置を確立する(Positioning)ためのフレームワークです。

プロモーションに活用できるリソースはあくまで有限です。医療用医薬品市場において、その限られたリソースの中でいかに価値を最大化できる市場を見つけるかが重要であり、STPはそのプロセスを体系的に整理するための必須の手法であると言えるでしょう。

本稿では、「マーケティングにおけるSTP分析の本質」と題して、3回にわたり、STPの本質を解説していきたいと思います。まず、第1回目のSTPの最初のステップ「セグメンテーション」です。

セグメンテーション:医師と患者をどう捉えるか

セグメンテーションは、STP分析の最初の出発点として重要です。なぜなら、ここで細分化されたセグメントが、この後のターゲティング、ポジショニングのベースとなるからです。

「医師」や「患者」といった大きな枠を、共通の特性やニーズを持つグループにどのように分けていくか。この基準や軸をどのように設定するかで、その後のターゲティングの精度が大きく変わります。

医薬品マーケティングでは、特に重要になるのは医師患者という、一次・二次顧客層をどう理解するかということです。

1】医師のセグメンテーション

一般的なマーケティングでは、地理的変数(ジオグラフィック変数)、人口動態変数(デモグラフィック変数)、心理的変数(サイコグラフィック変数)、行動変数(ビヘイビアル変数)といった4つの切り口が使われます。ただし、医療用医薬品の場合、対象がすでに医師という専門職に限定されていることから、特に重要になるのは、施設・専門領域(人口動態変数)と売上・処方行動(行動変数)と言えます。

(1)人口動態変数:施設・専門領域

まず、実務上よく用いられるのが、読者のみなさんにとっても馴染みが深いと思われますが、施設種別や専門領域による分類でしょう。

例えば、ある製品Aの売上を施設別や専門別に分析してみると、次のような傾向が見えてくることがあります。

  • 循環器内科や呼吸器内科などの専門医ではシェアが高い

  • 一方で市場規模の大きい一般内科の非専門医ではシェアが低い

このようなデータは、自社製品の市場の偏りと、市場拡大の余地がどこにあるのかを考えるうえで重要な示唆を与えてくれます。このデータを基に、施設や専門性を更に細分化してみる必要があるかどうかを検討してみることも重要です。

 

2)行動変数:売上・処方行動

同じ医師でも、重視する価値基準や処方スタイルは一様ではありません。
例えば医師を「有効性を重視するタイプ」と「安全性を重視するタイプ」に分けてみると、

  • 有効性重視の医師では、製品Aのシェアが高い

  • 安全性重視の医師では、シェアが低い

といった違いが見えることがあります。
こうした分析は、単なる市場理解にとどまらず、MRの情報提供の内容やプロモーションのメッセージ設計にも大きく関わってきます。

「どの医師が何を重視して意思決定しているのか」をデータから読み解くことが重要です。

また、上述の医師の施設・専門領域のセグメントに、売上・処方行動を掛け合わせてみるのも有効です。

ただし、セグメントがあまりにも細かくなりすぎると、プロモーションの際の実際の運用が複雑になり過ぎてしまいますから、気を付けましょう。

 以下に、医療機関・医師のセグメントの切り口の例を示します。先程書いたように、セグメントがあまりにも細かくなるのは考え物です。ただ、さまざまな切り口のパターンを整理、準備しておくことは重要ですので、参考にしていただければ幸いです。

■医療機関・医師のセグメントの切り口の例

2】患者のセグメンテーション

医師の分析と同様に、患者のセグメンテーションも欠かせません。
疾患の特性によって患者像や患者層は大きく異なります。治療行動を理解することが製品戦略の基本になると言えます。

疾患の認知度・診断率・受療率

例えば、認知度が低い疾患の場合、未受診の潜在患者が多いため、この領域のセグメントを細かく定義する必要があります。

  • 診断率が低い場合医師への教育や診断促進が必要

  • 受療率が低い場合疾患啓発や患者の受診支援やアクセス改善が必要

このように疾患の特性を理解したうえで、患者の位置づけを正確に把握することがマーケターの重要な役割です。

薬剤特性と患者セグメント

同じ疾患でも、薬剤によって適した患者層は異なります。
例えば、

  • 製品A:軽症〜中等症の初期患者が対象

  • 製品B:重症患者、合併症を有する患者が対象

といった違いがある場合、それぞれの薬剤が 疾患の中でどの患者層に最も適しているのかを明確にする必要があります。
そのためには、重症度や治療状況だけでなく、併存疾患や生活背景なども含めて多角的に患者像を捉えることが大切です。

患者のセグメントの切り口の例を以下に示します。

こちらも、医師と同じように、セグメント自体を必要以上に細かくする必要はありません。ただ、さまざまな切り口を理解しておくことは、患者のペルソナ作成の際にも有効ですので、参考にしてください。

 

■患者のセグメントの切り口の例

■ STPがもたらす戦略的価値

こうしたセグメンテーションを通じて市場構造を整理し、そのうえでターゲティングやポジショニングを考えていくことで、マーケティング戦略の方向性はより明確になります。

近年は医療データや市場データの活用が進み、以前よりも精緻な分析が可能になりました。

その分、分析の質そのものが戦略の質を左右する場面も増えています。

 おわりに

STP分析は、単なる理論的なフレームワークではありません。
市場を理解し、限られたリソースの中で成果を最大化するための思考整理のツールでもあります。

その土台となるのが、適切なセグメンテーションです。

医師と患者を多面的に理解し、データをもとに意思決定を行うこと。

それが、競争の激しい医薬品市場の中で自社製品の価値を高めていくための重要なポイントになるはずです。